クールな王子は強引に溺愛する
静寂に包まれる早朝の雰囲気がエミリーは好きだ。空気がいつも以上に澄んでいて、白んで明けていく空は清々しい。
こぢんまりとした二輪馬車がすでに屋敷の前に停められており、モリーとともに乗り込んだ。御者は二人が乗り込んだ様子を確認すると、馬車をゆっくりと発進させる。
馬車に揺られながらモリーは昨晩から感じていたであろう懸念をエミリーに伝えた。
「修道院長に不義理をしてしまったと、気に病まれる必要はないと思います。よもや今すぐにでも、修道女になられようなどとは、思われておりませんよね?」
修道院には宗教的側面とは別に、女性の逃げ場のような保護施設としての役割もあった。生涯独身でいようと心に決めた女性は、修道女として神のために仕えるのだ。
エミリーは結婚をせず、修道女になりたいと両親をはじめ、モリーにも伝えてある。両親は寂しそうにしていたものの、エミリーの要望を聞き入れてくれていた。
モリーからは幾度となく『貴族の集まりが苦手なのは分かりましたから、なにも生涯独身を貫かれなくとも』と言われ続けていた。