クールな王子は強引に溺愛する
「野苺の旬は短いの。ジョージは畑の世話に忙しいでしょう? 野苺が実をつけているかどうかと煩わせるのは可哀想だわ」
ジョージは農場の息子で野苺が実をつけていると知らせると一家総出で摘み取りに行ってくれる。
それを煮詰めたジャムはエストレリアの新しい名産になりつつあった。
しかし森の奥にある野苺の実る場所は山道をかなり歩く。
まだ実をつけていない野苺を見に行くのは、農場を切り盛りしているジョージには忙し過ぎるのだ。
「だからと言って伯爵令嬢であるエミリー様が出向かなくてもよろしいのですよ?」
いつもは令嬢らしからぬ振る舞いも大目に見てくれているローレンスが目くじらを立てるのは珍しい。
白髪混じりの髭を撫でつけ、眼鏡を押し上げるローレンスにモリーは興味津々な顔をしてお伺いを立てた。
「もしかしてなにか重要な便りが届いたのですか?」
直球の質問にもローレンスは顔色一つ変えず、恭しく胸に手を当て頭を下げる。
「旦那様がお帰りになられるまで、着替えられてください」
ローレンスにこれ以上詰め寄ったところで質問には答えないだろう。「ええ」と伯爵令嬢らしく控えめに返答した。