クールな王子は強引に溺愛する
エミリーは夢を見ていた。
最初は怖い夢だった。内容は覚えていないが、ひとりぼっちになってしまいそうな、そういう類いの怖さだった記憶がある。
それからふわふわと温かい綿雲に乗っているように心地よい揺れを感じたあと、『愛している』と、そう聞こえた気がした。
目を開けると、長い睫毛が伏せられた美しい横顔が目の前にあった。精悍な面立ちも、安らかな眠りの中では穏やかで優しい顔つきをしている。
リアムの横顔を見つめ『第二王子の妃として、紹介するつもりはない』という言葉を思い出し、胸が軋む。
『心に決めた方がいらっしゃるから、元帥まで登り詰めた』との噂話はリアムの兄である第一王子バージルのことだろうと察しがついた。
だからと言って、心に決めた人がいないとは聞いていない。妃として迎えないのは、やはりキッシンジャー卿から守るためだけに側に置いたのだろう。
胸が張り裂けそうな思いがしたが、側にいられるだけでもいい。そこまで思うまでに膨れ上がったリアムへの気持ちはどうすることもできなかった。