赤い宝石の約束


『ねぇねぇ!この中に砂と海の水も入れようよ!』


『おう!行こうぜ、行こうぜ!』


私たちは海へ走った。


瓶の中に砂と海水、緑と青の拾ったシーグラスを入れた。


その瓶を大きな流木の上に置いて、


3人でそれを見つめた。


『これは、3人の宝物にしようぜ!』と涼。


『うん!じゃ、誰にも見つからないように埋めようよ!タイムカプセルみたいに!』と私。


『でも流されちゃうんじゃない?』と蓮。


『蓋してあるし、大丈夫だよ!』と涼。


『じゃ、いつ掘りに来る?』と蓮。


『じゃー…10年経ったらは?』と私。


『10年!?ながくねーか?』と涼。


『19才か…』と蓮。


『忘れねぇかな?』と涼。


『絶対忘れないよ!!』


『じゃ、19才になったらまたここで3人で会おうぜ!』


『うん!それで、また赤のシーグラス探そう!』
 

そう言って埋める場所を探した。


でも、やっぱり持って帰りたくなって。


『あのさ、やっぱりなくなったら嫌だから持って帰りたい。』


『えっ!?なんだよ!お前が埋めたいって言ったんだろ!』


『ごめんなさい…』


『いいよ。真央が持っててよ。』


『ありがとう、蓮。』


すると涼が、


『じゃ、もっと海っぽくしようぜ!』


そう言って、岩場の方へ走って行った。


『そっちは危ないから行っちゃだめだよ!』


蓮の言うことなんか聞くわけない。


『ほら!こっちこっち!』


私と蓮は渋々ついていく。


『ねぇ!何入れるの?』


『ちゃっちゃいカニだよ。』


『カニ!?』


『おっ、いたいた!』


『えっ?どこどこ?』


『ここだよ!早く早く!』


私は蓮に瓶を渡し、涼の元へ急いだ。


が、途中、大きな波が来て、


驚いた私は転んでしまった。


膝から沢山血が流れた。


痛くて痛くてたまらなかった。


どう宿に戻ったかは覚えてないけど、


涼は涼のお父さんにひどく叱られていた。


父と母が涼のお父さんに、


『うちの子の不注意ですし、大丈夫ですよ。』


と言ったけど、涼のお父さんは涼を叱り続けた。


涼は謝り続けた。


蓮はその様子に耐えられなかったのか、


持っていた瓶を私に渡すと、


自分の部屋へ戻って行った。


今日は最後の夜。


明日は帰る日。


夕ご飯の時、涼が食堂にやってきたけど、


何も話さず、食べたらすぐに行ってしまった。


私は涼と話したかった。


このままサヨナラは嫌だった。


でも1人では行けず、蓮を探した。


廊下を歩いていると、涼の声が聞こえてきた。


『真央…大丈夫かな…』


『うん…』


『俺のせいだよな…』


『…』


『俺さ、どうしてもあの瓶にカニを入れたかったんだよ…』


『どうして?』


『ほら!カニって赤いだろ!赤いシーグラスの代わりになるだろ!』


『…』


『あいつ、俺のこと、嫌いになったよな…』


私はたまらず、

 
『嫌いになんかなってないよ!』


と、勢いよくドアを開けた。


『なんだよ!ビックリするだろ!』


『赤いシーグラスの代わりにカニってなに?涼って本当におもしろいね(笑)』


『なんだよ、笑うなよ!』


蓮が心配そうに聞く。


『足は大丈夫?』


『痛いけど、大丈夫だよ!ごめんね。』


『なんで謝るの?』


『だって、涼がいっぱい怒られちゃったから。』


『別に、俺は大丈夫だよ。あれぐらい!』


『また絶対探しに行こうね!シーグラス!』


『10年後だろ?見つかるといいな。』と涼。


『僕は毎日見に行けるから探しておくよ!』と蓮。


『本当!?ありがとう!』


廊下から声がする。


『りょー!』


涼のお父さんだ。


『なにぃ?』


涼がドアを少し開け、隙間から覗く。


『ほら、パジャマ!』


涼に渡す。


涼はパジャマを受け取ると、すぐにドアを閉めた。


『パジャマ?なんで?』


と聞くと、


『うん。俺ここで寝てるから。』


『そうなの!?じゃ、真央も寝る!』


『えっ!?』


涼と蓮が驚く。


『蓮、真央もここで寝たい!いい?』


蓮は困っていた。


けど、


『ちょっと待ってて!聞いてくる!』


お母さんの元へ走った。


『お母さん!今日、蓮の部屋で寝ていい?涼もいるの!3人で寝ていい?』


それを聞いた蓮のお父さん。


『じゃ、広い部屋に3人のお布団敷いてあげるよ。』


『やったー!!!』


最後の夜、3人で一緒に寝た。


もちろん私は真ん中で。


『なんか楽しいね。こうゆうの。』


『そうだな!』


『また10年後、絶対絶対会おうね!』


『うん…そん時は絶対見つけようぜ。』


『僕も頑張って見つけておくよ。』


『ありがと!2人とも大好きだよ!』


『…』


『…』


『2人は?真央のこと好き?』


『えっ!?俺は…まぁまぁかな…』


『まぁまぁ!?』


『僕は、好きだよ。』


『蓮、ありがと!』


『じゃ、俺も…す…す…蓮と同じだ!』


『蓮と同じって?』


『だから、同じなの!!』


明日になるのが寂しくて、


ずっと話してたかったけど、


疲れていたせいか、すぐに眠ってしまった。


朝、父の会社の人から連絡があり、


仕事の関係で早くに出なきゃいけなくなった。


私は瓶を蓮に渡した。


『これは蓮が持ってて。絶対なくしちゃダメだよ。赤いシーグラス見つけたら入れといて。10年後、また会おう。忘れないでね。』


『うん!』


『はい!指切り!!』


『嘘ついたら針千本のーます!指切った!』


『あっ、涼!カニは入れないでね!(笑)』


『入れねーよ!』


私達家族はみんなとさよならをした。


蓮、涼、バイバイ!


また10年後、約束だよ!!


そして、夢が終わったのか、真っ暗になった。


暗闇の中で、蓮の声がした。


『真央、涼を、お願いね。』


やっと思い出せた約束。


いろいろな感情が溢れてきて、


涙が出た。


蓮、涼…


ごめんなさい。。


大事な約束、


忘れててごめんなさい…

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