ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「誰かいるのですか?」
表情をこばわらせてロザンナが問いかける。一拍置いて、強い風が波となって吹き抜けた。ディックを大きく揺らし、ロザンナの足もわずかに後退する。
林の中から姿を現したのは、騎士団の制服に身を包んだ大柄の男だった。
騎士団員かとホッとしたのはほんの一瞬、すぐにロザンナは違和感を覚え、男をじっと見つめる。
にやりとした笑い方に歩み寄る姿、雰囲気すら粗野に思えた。
この男性は本当に、品行方正であるべきとされている騎士団員なのかと疑ってかかってしまうほど。
「これはこれはロザンナ・エストリーナ嬢。ダメですよ、こんなひと気のない場所を、美しいあなたがひとりでふらついていては」
名前を呼ばれただけで、ぞわりと背筋が寒くなった。
男が花壇の間の通路へ足を踏み入れどんどん距離が近づいていることにも、余計恐怖をあおられる。
この人は危険。本能でそう感じ取りつつも、ロザンナはなんとかにこりと微笑みかけた。
「勝手にうろついてしまってすみません。すぐ戻ります」
ちょうど目の前で男が立ち止まったため、警戒心を悟られないようできるだけ冷静にその横を通り過ぎようとしたが、突風に襲われてロザンナの足が止まる。