ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています


「おふたりでどこに行っていらしたの? ロザンナさんだけずるいですわ。もちろん私も、今度どこかへ連れて行ってくださいますよね」


アルベルトはわずかに眉根を寄せるも、王子は候補者を平等に扱うという決まりがあるため、断りの言葉は紡がない。

このままマリンが食い下がれば、嫌でもどこかに連れていく約束をさせられることになるだろう。

ロザンナはアルベルトの前へと進み出て、マリンと向き合った。


「決してふたり一緒に出かけていたのではありません。たまたま帰りがけにお会いしたので、馬車をご一緒させていただいただけです。贔屓だなんてとんでもない。ただの偶然ですわ」


見当違いと笑い飛ばすと、マリンは不機嫌さを隠そうとせず顔を歪めた。

しかし、思い切り睨みつけられても、ロザンナは攻撃の手を緩めない。


「以前、アーヴィングから提案をされたのですが、それの返事をマリンさんを通してさせていただきますね」


一旦言葉を切り、ロザンナは大きく息を吸い込む。そしてハッキリと告げた。


「私は、花嫁候補を辞退しません」


場が異様な静けさに包み込まれる中、ロザンナは最後にひと言「以上です」と笑顔で追加する。


「アルベルト様もここまでで結構ですわ。寮はすぐそこですから」

「わかった。それではまた」


すぐさまアルベルトは笑みを堪えきれない様子で頷いた。別れの挨拶をした後、アルベルトもロザンナもそれぞれに身を翻し、歩き出す。

これからもアルベルトのそばにいたい。諦め続けてきた思いを胸に強く抱いて、ロザンナは覚悟と共に前へ突き進んでいく。



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