ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「授業内容は、答案返しに答えの解説。だから、仕事が詰まっているという理由で抜け出すことにした」
アルベルトの成績は常にトップ。今回も同じだろう。
ひと段落ついた今、少し息抜きをしたいのかもと想像しながら、ロザンナはアルベルトと並んで腰下ろした。
馬車が進み出すと、自然とロザンナの目は窓の向こうへ。しかし意識は、アルベルトに握り締められている手の方にあった。
気恥ずかしさを押し隠しながら、ロザンナは口を開く。
「それで、これからなにを?」
「……昼寝がしたい」
彼からの短い返答に、やっぱりとロザンナは笑みを浮かべる。それなら行き先はあの森だろう。
「試験も重なって、ここのところ大変でしたものね。お付き合いします」
「さすがロザンナ。話が早い。ありがとう」
すでに眠たげなアルベルトの声音に誘われて、ロザンナも小さくあくびをする。
ロザンナ自身、寝不足はまだ解消されていない。このままあの場所に行ったら、前回と同様一緒に眠ってしまうだろう。
ぼんやりし始めた頭の片隅でそれでも良いかと考えながら、馬車が停止したのを感じ取った。
ゆらり頭を持ち上げたアルベルトが窓の外を見て、「着いたか」と呟く。