ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
喜びに満ち溢れたロザンナの声に、アルベルトの呟きが続く。
扉へ振り返ると、戸口にアルベルトが立っていた。トゥーリは丁寧に腰を折り、ロザンナはアルベルトに「そうなんです!」と駆け寄っていく。
ロザンナの様子にふっと笑みを浮かべて、アルベルトは提案する。
「支度は出来てるようだな。少し早いがアカデミーに行くか」
「はい!」
ロザンナは掴み取った鞄の中へ持っていた教本を入れてから、トゥーリに「行ってまいります」とお辞儀をし、アルベルト共に部屋を出た。
アルベルトの部屋の隣が、今のロザンナの自室となっている。
そわそわしていたためか、階段に降りようとした時、ずずっと足を滑らせ踏み外しそうになる。
しかし、ひやりとしたのはほんの一瞬、すぐさまアルベルトに腕を捕まれ、ロザンナは引き寄せられた。
「気をつけて」
「ありがとうございます」
顔を見合わせて微笑んでから、ふたりはゆっくりと階段を降りていく。
城の外へ出た途端、馬車の車輪の点検をしていた御者がアルベルトとロザンナに気付いて慌て出す。
「もう行かれますか? 実はまだ警護の騎士団員が到着していなくて」