ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています

「それでしたら、アルベルト様がお座りください」

 椅子には患者であるアルベルトが座るべきだとロザンナが促すと、アルベルトは頷いて素直に従う。
 緊張気味に、ロザンナは彼に向かって手を伸ばすが、途中でぴたりと動きが止まった。
 治癒は相手に触れつつ行うもので、アルベルト自身も手を差し出したままの状態である。
 同意の元であっても、相手は王子だ。今更ながら気軽に触れていいのかとロザンナの心に小さなためらいが生まれる。

「……人に魔力を使うのは初めてですし、うまくできずご迷惑をかけてしまうかもしれませんが……本当によろしいのですか?」

 そして触れる以上に、王子を実験台にしてしまって良いのかという考えが頭をよぎる。
 ロザンナが確認するように問いかけると、アルベルトは急に不貞腐れた顔をし、肩をすくめた。

「構わない。俺がロザンナの初めての患者になりたいから」

 彼の口から真剣に告げられた思いにロザンナの鼓動が大きく跳ね、自分を真っ直ぐ見つめる眼差しに心が熱くなる。
 時が止まったような錯覚に陥りながら見つめ合っていると、そっと、アルベルトがロザンナの手を掴んだ。

「あいつにも、もちろん他の誰にも、ロザンナの初めては譲れない」

 別の意味にも聞こえてくる彼の言葉に、ロザンナは大きく目を見開く。掴まれた手がほんのわずかに震え、心に芽生えた熱が一気に広がっていく。
 つい膨れっ面で「揶揄わないでください」とロザンナが文句を口にすると、アルベルトはすぐに表情を崩し無邪気に笑って、掴んでいた手を放した。

「よろしく頼む」

 改めて、切り傷のある手を差し出され、ロザンナは自分の中で燻る気恥ずかしさを必死に押し隠しつつ、アルベルトと向き合う。

「では……失礼致します」

 気持ちを切り替えるように息を吐き出したのち、両手で温もりを包み込むようにして、アルベルトの手に触れた。
 ロザンナが発した魔力の輝きをアルベルトはその身で受け止めながら、心地よさそうに、そして満足気に目を瞑ったのだった。


<END>
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