ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
ロザンナはポカンとした顔をアルベルトに向ける。アルベルトも驚いた様子でロザンナを見つめ返した。
そんなもの持ってない。……持っていないはずだ。なんだか急に怖くなって、ロザンナは立ち上がり、後ずさる。
改めて自分の両手を見つめると、「あっ」とアルベルトが小さく呟き、視線を館の方へと向けた。
「演奏が止んだ。そろそろ戻らねばならないらしい」
言われて気付いたが、確かに先ほどまで微かに流れていた音楽が聞こえない。
そして、急にスコットのあわてふためく姿が頭に浮かび、そろそろ自分がいないことに気づく頃ではとロザンナは顔を青ざめさせた。
「実はお父様に黙って出てきてしまったの。私も戻らないと」
「だったら一緒に戻るか?」
「いえ。遠慮させていただきます!」
アルベルトと一緒に戻ればスコットは大喜びするかもしれないが、花嫁候補が大勢いるのだから後々の火種になりかねない。それだけはなんとしても避けなくては。
「それではお先に!」