ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
現宰相はマリンの父だが、その前の代はロザンナの父、スコットが務めていた。
スコットは二年前に事故で亡くなってしまったが、それまでは国王に深く信頼されていたため、入学当初は花嫁候補として有力なのはロザンナではという声も上がった。
しかし、その声はすぐに小さくなっていく。ロザンナが積極的にアルベルトにアピールする様子は一切なく、逆に他の候補者に混ざってマリンを応援し始めたからだ。
ロザンナがアルベルトの花嫁になることを望んでいないのが伝わり、そしてアルベルトもマリンを頻繁にデートに誘うようになったため、ロザンナが予想から除外されマリン一択となる。
けれど、最終試験結果を知ったアルベルトから「よく頑張ったな」と微笑みかけられただけで、いつの間にかロザンナはマリンの対抗馬として担ぎ上げられてしまったのだ。
「気持ちをしっかりね」
ポンポンと背中を軽く叩かれ、ロザンナはルイーズへと視線を戻した。
「ありがとう。私は大丈夫」
彼女は取り巻きではなく本物の友人。年上の花嫁候補も多い中、共に十六歳ということもあって、入学当初から仲が良く、ここまでずっと励まし合ってきた。