ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
誰よりも心を許している彼女に対して笑顔を見せてから、ロザンナは深呼吸してゆっくりと開かれていく扉を睨みつけた。
現れたアルベルト第一王子に女生徒たちから黄色い声が上がる。
ダークブラウンの髪に、同じ色を宿した瞳。目を奪われるほど精悍な面持ちはどことなく甘く、すらりと細長い体は、男性的な逞しさもしっかりと有している。
彼に愛されたいと切望した時もあったが、それは最初の三回だけ。四回目で諦めた。
アルベルトが選ぶのはマリンだと、ロザンナは最初から知っている。
彼が彼女の手を取り愛の言葉を口にする光景を、青い瞳で八回も見続けてきているのだ。繰り返して九回目のこの人生も、アルベルトの出す結論は同じ。きっと何も変わらない。
人々が避けてできた道をアルベルトが進んでくる。これから己が選んだ花嫁を公表するというのに、表情は厳しく浮かれた様子は全くない。
アルベルトも一般の生徒に混ざってアカデミーで学んでいる。
見た目だけなら漂う高貴さに近寄りがたく感じるのだが、当の本人は身分の高さ鼻にかける事ない。誠実で努力家というだけでなく、冗談も口にするような気さくな面を持っている。