愛は惜しみなく与う⑥

「私、少し仕事が残っていて、この廊下の向こうの部屋に居ます。何かあればいつでも言ってくださいね」

笑顔で去っていくお母さん


でも、どの部屋に入ればええか分からへんねんけど?

立ち止まっていると不思議そうな顔をして近づいてくる


「あら?冬馬の部屋、忘れちゃった?」


クスクスと笑い、あたしの右手の部屋の扉を開けてくれた。
なるほど…鈴はここに何回か来てたんやな


「すみません。少しぼーっとしてました。ありがとうございます。待たせていただきます」


すんなりと部屋に入れた

それだけ鈴は、この家に馴染んでいたということ。それが余計怖い


何もないシンプルな部屋

ベッドと机
物も床に落ちていない、なんとも生活感がない部屋


「すんなりだな」

「うん。びっくりするくらい」


ここで…サトルは冬馬として、普通に過ごしてるんやな。
外であんな悪事を働いてるのに…どうしてこんな、平和な居場所があるのか。


「杏…これ」


泉は何かを見つけたのかあたしを呼ぶ。
泉の近くへ行けば、泉が何のことを言っているのかが分かった
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