花屋敷の主人は蛍に恋をする




 「じゃあ、私があなたでも触れる花を作ります」
 「え………」
 「薬でも何でも作ります。それに、俺は花枯病の事も知ってる。怖くないですよ」


 碧海に出会ってから花枯病の事を調べることが多くなった。そして、その病気は世間では知られていないこと、知っていたとしても差別される事が多いこと。そして、孤独を感じている患者が多いと言う事を知った。
 明るい碧海だが、さっきのように偏見で見られてしまった事もあるのだろう。
 だったら、少しでもそんな人達を少なくしたいと思ったのだ。植物学を学んだ一人として何か出来るのではないか、と。


 樹は真剣な表情で碧海を見た。
 碧海は、ポロリと目から溢した。泣きなんでくれた、と思ったが彼女の表情は変わらなかった。


 「そんなの無理よ」
 「やってみたいとわからないじゃないですか!」
 「………私の命があと少しだってわかってて言ってるの?」
 「っっ…………」
 「…………やっぱり知ってたんだね」


 花枯病の患者は短命だ。先天性のものだと、30歳まで生きられないのだ。
 危険な状態になると、手足は細くなり肌も白くなる。そして、太陽の光、紫外線を浴びると肌に激痛が走るようになるのだ。そして、瞳が緑に染まってしまうと、余命は残りわずかなのだ。
 そのどれもに碧海は当てはまっている。
 樹は出会ってからすぐに気づいていた。



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