クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
「私は、それでいいのだと思っています。彼女たちは、いずれここを出て親元に帰り、然るべき時期が来れば殿方に嫁いで、家庭を切り盛りする奥方になる。街には、あらゆる商店が軒を連ねています。奥方が、自らの手で獲物を捕らえ、捌く必要はありませんから」
 静かに語られたのは、物の真理を正しく突いた言葉だった。しかし、いまだ見習い中の若い身空の彼女が口にしたことに、少しばかり違和感を覚えた。
「あ、そうそう。それからあなたの雇い主には、『私はここを出ません』とお伝えくださいな。どんなに説得されようが、私の決意は変わりません。私は絶対に、伯爵家を掻き回す火種にはなりません」
 ……伯爵家?
「それはどういう意味だ?」
「え!? だってさっき『ずっと君を捜していた』とおっしゃっていましたよね? あなたは私を伯爵家に迎えようとやって来た使者なのでは……あ、あら?」
 ……あぁ、そうか。
 彼女の言葉でおおよその察しがつく。同時に、先に覚えた既視感の正体も知れた。
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