きみがため
そのとき、背中を悪寒が走った。

何かがおかしい。

頭の中で警笛が鳴り、気づけば私は、閉まったばかりの図書室のドアを開けていた。

とたんに、冷たい風が、一気に廊下に吹き荒れる。

そこは、文芸部の部室よりもさらに小さな部屋だった。

左右の壁に書架があり、さまざまな本が並んでいる。

そして真正面にある窓には、光がいた。

光は、何を思ったか窓枠に足をかけていた。

全開にされた窓は、光が身体をくぐらせるには充分な大きさで、今にも外に飛び出してしまいそうな勢いだ。

私は顔面蒼白になり、夢中で叫んだ。

「光、なにやってるの……!?」

自分の世界に浸っているのか、どんなに呼んでも、光はうしろを振り返ろうとしない。

その身体は、窓の向こうに吸い込まれるかのごとく、少しずつ傾いていく。

私は慌てて図書室内に足を踏み入れたけど、もう遅かった。

光の足が、窓枠から、あっけなく離れる――。
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