きみがため
だけど思いがけずして、高校で彼女に会した。

成長した彼女は、笑顔を失っていた。

輝くようだったその存在感も、ひっそりとなりを潜めていた。

まわりの様子を伺うように、自分を押し殺し、苦しそうに生きている。

そんな様子を見てに、胸をえぐられるような心地になった。

入学して間もなくして、定期健診の際、たまたま病院で彼女を見かけた。

彼女の弟は、重度喘息で入退院を繰り返していた。母親は、毎日仕事に追われていた。

彼女は家事と弟の世話に必死で、学校では、自分を偽るのに必死だった。

――彼女から笑顔を奪ったのは俺だ。
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