きみがため
「彼が、そんなことを……?」

愕然として、眠る桜人を見つめる近藤さん。

私は、黙ったまま頷いた。

「そう。長い間、とてもつらい思いをさせていたのね……」

今にも泣きそうな声で、近藤さんは言った。

それから、戸惑うような視線を私に向ける。

何かを言いあぐねているような顔だった。

「教えてください。本当のことが知りたいんです」

「遺族のあなたに聞かせるのは、とても勇気がいることなんだけど……」

「お願いします」

「……分かったわ。包み隠さず話します」

意を決したように、近藤さんが小さく息を吐く。

そして、あの日のことを、神妙な面持ちで語り出した。
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