きみがため
ああ、そうだ。

あれも、桜人が私に宛てた言葉だった。

彼の紡ぐ言葉は、私をいつも、見えないところから包んでくれていた。

悲しいほどに、あたたかく――。

「君のために……」

夜の闇に向けて、白い吐息とともに小さく呟いた。


ちっぽけで臆病な私に、悲しいほど尽くしてくれた君に、私はなにができるだろう?

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