一生ものの恋をあなたと
「ちよっ…!やめてください!
頭を上げてください!」

「いや。
蓮と話し合うと言ってくれるまでは…」

「は、話します!
話し合いますから!」

朝倉コーヒーの社長だよ?
こんなところ誰かに見られたら大変!
この人、何も悪くないのに
『若い女性に頭下げてた社長』
なんて言われたら大事だわ。

「…じゃあ、約束だよ?」

そう言って、にっこり笑われた。

あー、ダメだ。
相手の方が1枚も2枚も上手だ。
計算済みなのね。

「そろそろお色直し終わって帰ってくるね。
会場に戻ろうか。」

憎めない人だなぁ。
これは…お兄ちゃんが振り回されてるな。
だから『慎め!』なんだわ。

でも、話し合うなんて言っちゃったけど、
何を話すって言うの?

あ、そうだ、それよりも。
ちゃんとお伝えしておかないと。

「あの、さっきのスピーチ、すごく良かったです。」

「え!そう?
聞いてくれてたんだ。」

「当たり前じゃないですか…
主賓の挨拶ですよ?」

「いや、偉いさんの話なんて、みんなあんまり聞かないものでしょ?
いい子だねぇ〜。」

そんな、子供みたいに。

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