【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 兄の話によれば……。

 一週間ほど前から、うちが経営する料亭『橘』に、副社長と秘書の蔵本とが、毎晩のように通うようになって。

 偶然にも同じ年齢だったこともあり、兄と副社長は意気投合。二日もすれば、友人のような間柄になったらしい。

 そして、入院中の父のことから始まって、友人の連帯保証人になってしまって、その借金の返済を迫られていることや、私のことまで事細かに話し。

『侑磨さんの妹さんがうちの社員だったとは、これは驚きだ。これも何かの廻りあわせに違いありません。是非、僕に、尽力させてください』

『……ええ!? いやいや、そんな訳には……』

『じゃぁ、一千万円は僕が立て替えることにして、その返済は、侑李さんのお給料から天引きにする……というのはいかがでしょうか? それに、実は偶然、侑李さんには、僕からもお願いしたい件がありましてね。ちょうど良かったです。それなら、侑磨さんも気兼ねすることはないでしょうし。ね?』

 初めこそは躊躇っていたらしい兄も、あの人好きのする甘いマスクで、ニッコリと微笑まれてしまえば……。

 ただでさえ、他人を疑うということを知らない、騙されやすい兄のことだから、一瞬でコロッとなったに違いない。

 要するに。副社長もといこの鬼畜は、あのホテルで私を見つけて、副業の件で脅迫したにも関わらず速攻で断った私のことを色々探って、人の好さげな兄を手懐け。

 最後には自分の思惑通りに事を運んだということらしかった。

 どうりであの時、意外なくらいあっさり引き下がったと思ったら、まさか、こういうことになるなんて……。

 ――はぁあー、あったま痛くなってきた。
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