鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 結城君との、約十年ぶりの思いがけない再会に、ただただ驚くばかりだ。

 だって、確か夏休み中に、両親の離婚により母親の実家のある九州に引っ越していったていう話だったから、もう逢うこともないだろうと思っていたのに……。

 それがまさか、今更、大人になって再会するなんて、思いもしなかったのだ。

 なにより隼に雰囲気やタイプがよく似ている。

 ーーそりゃ、驚くのも無理はないだろう。

 ましてや、結城君には、若気の至りだとは言え、酷いことをしてしまったのだし。なおさらだ。

 酷いことというのは……。

 あの頃私は、恋愛経験どころか、誰かを好きになったことさえなかった所為で、結城君のことを好きになっていることにも気づかないでいた。

 それが夏休み間際、ふたりきりになったとき、結城君にいきなり濃厚なキスをされ、胸まで揉まれてしまったお陰で。

 あまりの羞恥と、いきなり何の断りもなくキスされてしまったことに激怒して、結城君を突き飛ばした挙句、結城君に酷い言葉を放ってそのまま逃げだしてしまった。

 それきり、結城君とは話さなくなって、夏休み明けになり、結城君が引っ越してしまったことを知って初めて、ようやく結城君への自分の気持ちに気づくことになってしまったのだ。

 私にとって、もう思い出したくもないくらい、苦い苦い思い出だった。結城君にとってもきっとそうだったに違いない。
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