鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
あれから場所を移動した私たちは、結城君お勧めの美味しい飲茶が個室で食べられるという中華料理店へと訪れている。
それはいいのだが……。すずの余計なお節介によって、結城君の隣の席に座らされてしまった私は、正面のすずから、ニヤニヤとした笑顔をお見舞いされつつ、複雑な心境で料理を味わっていた。
「侑李ってば、すぐカッとなって怒っちゃったりするのに、秘書なんかやってるんだよ? 想像つかないでしょ?」
「へぇ、凄いなぁ。高梨さん元々綺麗だし。家も料亭やってるだけあって上品だし。僕は向いてると思うなぁ」
「出た~、結城君の侑李贔屓。まぁ、でも、確かに黙ってれば、そうかもね~?」
「すず、黙ってればって、どういうことよッ」
「ほら、すぐ怒る。そういうとこじゃん」
こうして、円卓を三人で囲って話していても。
隣からは、相変わらず隙あらば私のことを褒めちぎったり、甘いセリフを繰り出してくる結城君のお陰で、空腹だった筈なのに、箸なんかちっとも進まない。
確かに、料理は華やかだし、味だって美味しいんだろうけど、味なんて分からない。
ーー砂でも噛んでいる心地だ。
これまですずには、逢うたびに、社会人になってから彼氏ができない、と嘆いていた私のことを心配してくれているからだってのも分かるし。
結城君だって、昔を懐かしんでいるから、あの頃のようなノリで言ってるだけで、本気じゃないんだろうし。