鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
隼のお陰で今度こそ泣き止んで、やっと落ち着きを取り戻すことのできた私は、それからまたしばらくの間、隼の逞しい腕に抱かれて、こうしてふたりで寄り添っていられるこの幸せを噛みしめていた。
その間、隼は私の頭をずっと優しく撫でてくれていて。
時折、微笑みあったり、私の髪や頭、額に瞼に頬にと、まるで慈しむようにそうっと優しく触れるだけの甘やかなキスを幾つも幾つも降らせてくれていた。
そこへ邪魔するように、出入り口の扉を誰かがノックする音が響き渡って。
入室を促す隼の声で少しだけ扉が開いて、ヒョッコリと顔を覗かせたのは譲さんだった。
「ふたりの時間を邪魔しちゃって悪いんだけど、確認だけさせてくれるかな? 侑李ちゃん、”あのこと"なんだけど」
いつもあけすけなくハッキリ訊いてくるのに、濁したりして、どうしたんだろう?
不思議そうな表情をしている隼同様、私も首を傾げつつ譲さんの声に耳を傾けていたのだが……。
数秒遅れで、『あのこと』が何のことを示しているか思い至って、私は思わず大きな声を放っていた。
「ま、まだですッ! 色々あって言いそびれてましたッ!」
「そうだよね、あんなことがあったんだもんね。じゃあ取り敢えず、尿検査の結果、間違いなかったから。隼にちゃんと伝え終わったら呼んでね? じゃあ、隼も侑李ちゃんも、ごゆっくり~」
どうやら気を利かせてくれたらしい譲さんは、私にだけ分かるようにそう告げると、毎度の如く明るい声で茶化してから立ち去っていて。
静けさを取り戻した病室で、私は、今の今までこんな大事なことを忘れていた自分に落胆してしまっていた。
いくら色々あったからって、こんな大事なことを忘れてたなんて、信じらんない。
でも、『間違いなかったから』ってことは、本当にお腹に、隼の赤ちゃんを授かってるってことなんだ。
ーーわー、どうしよう。メチャクチャ嬉しい。
大事なことを忘れてた自分を責めてたはずが、いつしか赤ちゃんを授かっていたことへの嬉しさで、自分のお腹をそうっと撫でつつ、ひとり感動してしまっていたのだった。
そこへ、「侑李」と隼に呼ばれてハッとした私の眼前には、何故か泣きそうな表情をしながらも、辺りに悲壮感を漂わせている隼の姿があって。
ーーえ? 何? どうしちゃったの?
困惑する私に向けて隼から、
「侑李。検査結果って、何? まさか、ガンとかそんな病気じゃないよね?」
飛び出してきたこの言葉に、ようやく合点がいった。
そして、同時に思い出したのだ。
そういえば、ホテルに譲さんを呼びつけた元々の原因は私の体調不良だったっけ。
しかも自分がガンかもしれない。なんて青い顔で案じていたんだっけ。とも。
途端に、隼への申し訳なさで、頭の中が埋め尽くされていく。