鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
この苛立ちをぶつけようにも、当のバカ兄貴は居ないし。
でもむしゃくしゃしてどうしようもなくて、持ち上げた枕をベッドに思いっきり投げつけることしかできなくて。
そんな私の耳には、
「まぁ、侑李さんが怒るのも無理はないですが。侑磨さんは侑磨さんなりに、侑李さんのためにと気遣ってくれたのですから、許してあげてください。それに、『雇用主の恋人、又は、それに付随する諸々の業務全般』を遂行するのに、都合がいいじゃありませんか。ねぇ? 侑李さん」
ベッドの淵に腰かけて、さっきまで私に事の経緯を話していた鬼畜の言葉の端々にたっぷりと含みを持たせた、そんな声が聞こえてきて。
俯いて項垂れていた私がその声の方へ顔を上げると、そこには。
口角を片方だけ厭らしく吊り上げて、ニヤリと怪しい微笑を湛えて、冷ややかにこちらを見据えている鬼畜の姿が待っていた。
キラースマイルを湛えたあの、王子様のような御曹司の皮を被っていた鬼畜が、とうとう本性を現したようだ。
さっきまで、あの人好きのするニッコリ笑顔を満面に張り付けていた所為で、どうやら私は、うっかり油断してしまっていたようだ。
あのホテルでたまたま見つけた私に目を付けて、弱みを握った挙句、貸しまで作って、兄まで手懐けて、わざわざ、『雇用契約』まで交わさせたのだ。
初めっから、”恋人のフリ”だけで済ます気なんて、さらさらなかったに違いない。
ここにきてようやく”鬼畜の魂胆”に気づくことになったところで、もう、手遅れだ。
もう、賽は投げられたのだ。匙を投げるほかない。