鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

「さっき言ったよね? 侑李のことをめいっぱい幸せにするって。どんなことでも受け入れるから、僕のことを信じて頼って欲しい。世界中探し回っても侑李の病気を治してくれる医者を探し出してみせるから。だから、ちゃんと話して欲しい」

 やっとの思いで声を振り絞って、そこでようやく侑李に動きがあった。

 侑李は、僕の言葉を最後まで聞き届けてすぐ、今にも泣きそうなのをなんとか堪えようと必死な表情で僕の胸に飛び込んできて。

「侑李、気づいてあげられなくて、ごめん」

 僕は、侑李の辛さに気づいてあげられなかったことを詫びながらも、侑李の全てを受けとめようと必死になって、侑李の身体を受けとめ、めいっぱい抱きしめていた。

 ーー例えどんなことがあっても、ずっと傍で支えてみせる。どんなことをしてでも、侑李のことを病気からも守ってみせる。

 それなのに……。

「違うの、隼。全部誤解なの。ガンとかじゃなかったの。私のお腹の中には、隼の赤ちゃんが居るの」
「……」

 思ってもみなかった言葉が侑李の口から飛び出してきたものだから、僕は危うく心停止を起こしそうになった。

 とはいっても、そういう経験なんてないが、それくらいの衝撃だったのは間違いない。

 侑李の言葉を耳にして、真っ先に僕の頭に浮かんだのは、侑李にプロポーズした帝都ホテルでの、あの夜のことだ。

 あの夜、持参した避妊具を使い果たしてしまった僕に、ありのままの僕を受け入れたいと言ってくれた侑李のお強請りに応えて、それ以降の数回に関して、確かに僕は避妊はしていない。

 侑李にお強請りはされたものの、もう既にプロポーズの返事ももらっていたし、侑李との子供なら、いつ授かってもいいとさえ思っていた。

 今日だってそうだ。

 パーティーで談笑した、最近二人目の子供を奧さんが出産したばかりの松岡さんのことがとても羨ましかった。

  本音を言えば、もう少し、侑李のことを独り占めしていたかったっていう気持ちもある。

 でも、何より驚いたのは、侑李から聞かされた瞬間、言いようのない嬉しさが込み上げてきて。

 同時に、侑李と侑李のお腹の赤ちゃんが無事で居てくれて良かった。

 侑李と僕の元に来てくれて、ありがとう。

 今まで三十年間生きてきた中で、こんなにも嬉しいことがあるんだってことを、僕が生まれて初めて思い知った瞬間だった。

 僕は侑李のことを今一度抱き寄せ、しっかりと腕に閉じ込めたまま。

「侑李も、お腹の赤ちゃんも、無事で……居てくれて、本当に……本当に、良かった」

 これ以上何かを口にしてしまえば、そのまま泣き崩れてしまいそうで、そう口にするのが精一杯で。

 もう胸がいっぱいで、感極まったのを通り越して、どうにも嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。

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