【紙コミックス①②巻発売中】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
教室に戻った私は、五時限目の授業が始まるまでの時間を、乱れた呼吸もそのままに自分の机に突っ伏したままで過ごした。
その間に、用事を済ませて職員室から戻ってきたらしいすずの、
「あれ? 侑李、寝ちゃってる」
独り言ちる声が聞こえてきたけど。とてもじゃないが、反応を返すような心情でもなかったし、余裕なんてものもなかった。
屋上からここまで戻ってくるのに、階段を駆け下りてきた所為で、ただでさえ、呼吸が乱れていて苦しくて堪らないっていうのに……。
あの時の苦しそうだった結城君のドアップの顔が、瞼の裏に焼き付いていて。
唇には、ぐいぐい押し付けられていた結城君の唇や、咥内にはねっとりとした熱い舌が蠢いていた感触まで残っている。
さっきから胸の鼓動が全然おさまらない。もしかしたら、もっと酷くなっているかもしれない。
ーーもうイヤだ。今すぐ帰りたい。
今まで、恋愛経験どころか、誰かを好きになった経験すらなかった私は、この胸の苦しい原因が、まさか、結城君のことを好きになっているからだなんてことには、勿論、気づいてなどいなかったのだ。