鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
やっと結城君から解放された私は、後ろのフェンスに背中をだらりともたげて、不足した酸素を必死で取り入れるために、肩を何度も上下させている。
私はいつのまにか涙を流していたらしく、涙で滲んでぼやけてしまっている眼の前には、私に突き飛ばされた結城君がコンクリートの床の上で尻もちをついた体勢で、突然の出来事に何が何やら分からないっていう表情で、呆然としてしまっている。
恐らく数秒間くらいの間は、お互い呆然としたまましばらく動けずにいたのだけれど……。
私に突き飛ばされたことで正気を取り戻したらしい結城君が、ハッとした表情をしたかと思った時には、もう結城君は私の眼前に居て。
ガバッと私の眼前で頭を深々と下げた結城君に、酷く申し訳なさげな声音で、
「高梨さん、いきなりキスなんかして、ごめん。びっくりさせちゃったよね? でも、僕、高梨さんのことが好きで。だから、我慢できなくて、本当にごめん。でも、本気だから。もう、あんな風にいきなりキスなんてしないから、僕と今まで通り仲良くしてくれないかな? 高梨さんも、少しは僕のこと好きになってくれてるんでしょ?」
そういって謝ってこられた後で、顔を上げてきた結城君に、自分の気持ちを確かめられてしまったけれど。
確かに、結城君のことを意識しちゃってたけど、誰かを好きになるってことがどういうことかもまだ分かんなかったし。
私は、自分が結城君のことをどう思っているのかも分からなかった。
だからそんなことよりも、さっきのキスの所為で、結城君の少し赤く色づいた艶めいた唇が生々しく見えてしまい。
私は、ついさっきまでキスをしていた結城君の唇の感触と胸を揉まれた感触までもフラッシュバックさせてしまった。
その所為で、一方的にあんなことをしてきた結城君に対しての怒りと、ありえないほどの羞恥に襲われてしまった私は、
「あんたのことなんか好きじゃないッ! それに、ビックリさせて悪かったなんて謝るくらいなら、最初っからキスなんかしてくんなッ! 好きで我慢できなかったなんて、ふざけるなっ! ちょっとモテるからって、いいきになるなっ! あんたみたいな自分勝手な勘違い野郎なんて、大っ嫌いッ! もう、顔も見たくないッ!」
烈火のごとく言い放ち、私の言葉にショックを隠せない様子の結城君が何かを言ってくるよりも先に、私はそのまま屋上から飛び出すような勢いで自分の教室まで一目散に駆け出していた。
自分のことに精一杯で、この時、結城君がどんな気持ちでいたかなんて考えもしなかった。