【紙コミックス①②巻発売中】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 だから、次の日になっても、その又次の日になっても、期末試験が終わってからも。急にぱったりと、姿を見せなくなってしまった結城君のことで、すずがあれこれ言ってきても……

「ねえ? 侑李。最近、結城君来なくなっちゃったね?」
「期末試験終わって、昼までだからじゃない?」
「う~ん。でも、中間試験の時は、休み時間とかに時々来てたじゃん」
「そんなこと言われても、結城君じゃなんだから知らないわよ」
「もー、侑李、冷たいなぁ? そんなだから結城君、もう諦めちゃったのかなぁ……。あーあー、折角、侑李に彼氏ができると思ってたのになぁ」
「そんなの必要ないしッ」
「そんなこと言っちゃって、本当は寂しいんじゃないの? あっ、もしかして、押してだめなら引いちゃえってやつかなぁ? 結城君、ちょっとあざといとこありそうだし」 
「もう、すず、うるさい」
「お似合いだと思ってたのになぁ」
「もう、暑苦しいってばッ!」

 表面上は、以前と変わらないやり取りをすずと交わすことができていた。

 でも、その間もずっと、何やら胸の奥の方が細い針で突かれているような、ツキツキと痛むような妙な感覚に襲われたり。

 すずの言うように、急に姿を見せなくなってしまった結城君のことが妙に気にかかって、なんだか胸にぽっかりと穴が開いたような、物足りなさのようなものを感じてしまっている自分に対して、内心では戸惑ってばかりいた。

 下校時や、時たま休み時間に、廊下で騒ぐ男子の賑やかな声に紛れて、結城君の名前を呼ぶ声を耳にしたりすると、知らず知らずのうちに、視線で追ってしまったりもして。

 そのクセ、いざ結城君本人の姿を遠目にでも見てしまうと、もうどうすればいいかが分からなくなってしまい、すぐにふいっと視線を逸らせてしまうことの繰り返しだった。

 そんなことを繰り返している間にも、時間はあっという間に過ぎてしまっていて。

 夏休みの前日を迎えた今日まで、結城君を遠目に見ることはあっても、話すような機会もないままだった。
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