【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 体育館の開け放たれた窓から時折漂ってくる生ぬるい風が頬を撫でていく中。

 汗でべったりとてかった額に張り付いてしまっているなけなしの髪の毛を校長がハンカチで拭いつつ、毎年代わり映えしないだろう注意事項を垂れ流すのを聞き流しながら……

 ――あぁ、速く終わんないかなぁ。暑いなぁ。眠いなぁ。

 とか考えているちょうどその時、なにやら急に後ろの方でざわざわと騒ぎ出した生徒たちの声がして。

 なんとはなしに振り返った先には、四組の列の最後尾の女子がどうやら貧血を起こしてしまったらしく、バタバタと数人の先生が駆け寄っているところだった。

 しばらく様子を窺っていると、担任の教師に抱きかかえられて退席していく女子が通り過ぎた後に、偶然にも隣の列で座っていた結城君と視線がかち合ってしまい。

 想定外のことに、心の準備もなにもできてなかった私は、動揺しまくりで、結城君からあからさまにプイッと顔を背けるという行動しかとれないでいた。

 けれど、背ける間際に、結城君が酷く悲しそうな表情をして顔を俯けるその様が瞼の裏に焼き付いたように、いつまでも消えてはくれなかった。

 それがまさか、結城君との最後になってしまうなんて、この時の私は夢にも思ってはいなかった。

 今は気まずくても、そのうち時間が経てば、またいつか普通に話せるときが来るだろうと思っていたんだ。
< 617 / 619 >

この作品をシェア

pagetop