【紙コミックス①②巻発売中】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
――ちょっとしっかりしなさいっ! 鬼畜のキラースマイルなんかに惑わされてどうすんのよ!
けれども、頭の片隅で、息をひそめていたらしい正常なもう一人の自分の声が聞こえてきて。そのお陰で、今まで見聞きしてきた鬼畜の言動を思い出してしまった私は。
きっとこれは、容赦のない鬼畜によって、盛大に喘がされて、強引にイカされてしまった所為で、酔って正常でないのだろう意識が混濁してしまっているからに決まってる。
――絶対そうだ。そうに違いない。
好きでもなんでもないこんな鬼畜なんかに、あんなに感じさせられた挙句、イカされたという事実だけでも、これ以上にない屈辱なのに……。
――そんな私が、こんな鬼畜にときめいちゃうなんて、そんなことあってたまるもんですか!
いくら正気じゃないからって、うっかり、ときめいてしまうという大失態を犯してしまった私は、ようやく我を取り戻すに至ったのだった。
もうこれ以上、鬼畜に惑わされないためにも、なけなしの平静をかき集めて、これ以上にないってくらいに虚勢を張って、
「別に、あなたに心配していただかなくても、平気です。これくらい、何でもありませんから」
ツーンとした口調でそう放った私は、これみよがしに、フンっとそっぽ向いて見せた。