【完】スキャンダル・ヒロイン

「こんなの全然痛くない。絆創膏貼って貰っただけだよ~?大袈裟でしょ~!」

ヘラヘラ笑って大丈夫と言うけれど、姫岡さんは頬に手を充てたまま。
じんわりと温かい。長い指で優しくそれを撫でてくれるから、不思議な気持ちになってしまう。

「大袈裟じゃねぇ!
俺の事なんてどうでもいいから…自分を大切にしてくれ……
本当に申し訳ない……。ごめんな?俺を庇って」

こんな項垂れた姿も初めて見た。

そして素直に謝る姿だって初めて見るのだ。夏だというのに明日雪でも降るんではないだろうか。 それは冗談だけど、やっぱり姫岡さんは優しい人だ。

「本当に平気だよ…。
それに姫岡さんは俳優さんなんだから、私なんかよりもっと体を大事にだよ。
それに今日、すごく素敵だった」

頬を撫でる手がぴたりと止まる。

「素敵?」

「うん。現場って実際見るの勿論初めてだったけど、姫岡さんの演技すごかった!
沢山俳優さんたちがいて、きっと有名な人たちも沢山いるんだろうけど、姫岡さんだけ特に輝いて見えた。
きっと演技が好きで、演技にも愛されている人なんだなーって改めて思っちゃった。
仕事をしている姫岡さんはすごくすごくかっこよくって、私’俳優’姫岡真央は好き――」

いつものあんたはムカつくけどねと言いかけたけれど、姫岡さんは頬に置いてあった手をパッと離して、突然窓の方を向いてしまった。

そして何故か黙り込んでしまった。ルームミラー越し、坂上さんのにこにことした優しい顔が浮かび上がる。

「姫岡さん?」

「フンッ」
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