【完】スキャンダル・ヒロイン
りっちゃんは、優しく微笑んだ。私に言いずらい事を隠してくれていた優しさが染みる。
「そういう優しさがしおりにして見たら気に食わないのかもしれないね。静綺は正々堂々って言うか、人を出し抜こうなんて考えつかない人間だから、見る人から見ればうざったいって感じる部分もあるのかもしれないし。
だって人ってどこかしら狡い部分を持ち合わせているから、あたしは好きだけどねそういう静綺の真っ直ぐな所は。遠回りをして誤解されながらも結局最後に幸せになれる人間は狡い事をせずに自然体に生きている人間だって思うし。
そういう静綺の良い所を分かってくれる人が静綺を好きになってくれるんだと思うし。そう考えたら雄太も安浦も北原先輩も見る目がある男だったよ。
後姫岡真央もね」
「だから…!真央は違うって――!
あ、そういえばね寮にもう一人新しい人が………」
そう。
昨日新たに寮で暮らし始めた人間がもうひとり。
大滝昴。今もっとも旬な若手俳優だ。その名前を口にすると、りっちゃんは卒倒しかけた。
うわ言のように「姫岡真央と大滝昴に囲まれるなんて…羨ましすぎる」と素直な言葉が口から駄々洩れしていた。
確かに大滝昴が寮にいるなんて、こっちの方が驚きだ。しかし彼が来てからと言うものの、真央の機嫌はとてつもなく悪い。