【完】スキャンダル・ヒロイン
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「おいッ遅ぇぞ?!」

りっちゃんとカラオケで話をし終わって、新宿で買い物をした。

夏のセールは既に始まっていて、財布の紐が緩くなったお陰で両手には荷物でいっぱいだった。

そして何故か帰って早々不機嫌そうに仁王立ちをして、怒鳴りつける真央の姿。機嫌はまだまだ直りそうにない。

「今日は日曜日。お休みですけど?」

一応土日は休みになっている。この寮の居心地が良くって、実家に帰ったりもしてなかったけれど。

「腹が減ったんだけど?!」

それも休みであれば私の業務外の話。とはいえ、寮に居座っているのと同時に望まれればご飯を作ったりもしていたけれど。

「そんな大荷物抱えてどこに行ってたんだよ?!」
「誰と会ってたんだよ?!」
「浮かれてんじゃねぇよ!」

全く何に浮かれているのやら。言いがかりすぎる…。そして理不尽だ。
後ろでキャンキャン吠えながらついてくる真央を無視して、食堂に入るとそこには………

「あ、静綺ちゃんおかえり」

ソファーに寄りかかってこちらを振り向いた。そこから溢れる笑顔は正に王子様というに相応しい。1ミリもずれがなく、完璧な身のこなし。

彼によく似合う爽やかなブルーのシャツの隙間からちらりと見える鎖骨が美しい。目も鼻も口も彼を造り上げる全てが甘い。それどころか私の名を呼ぶその声も少しだけ低いけれど、透き通っていて甘いんだ。

こんな完璧な上に物腰も柔らかくて気取っていない所が更に良い。思わずその場で立ち尽くし、ボーっと見とれてしまう。
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