【完】スキャンダル・ヒロイン

私は浮かれていた。しかし私が浮かれる度に不機嫌になる男がひとり。

「んん~!これめっちゃうまい。」

「その肉団子はおからを使っているのでヘルシーでもあるんですよ。良かったぁ~……」

「そうか?うまいか?フンッ」

褒めてくれたのは勿論昴さんで、貶してるのは真央だ。

「俺アボカドもだ~い好き」

「ちょっと味付け濃くないですか?大丈夫?」

「全然ポン酢でさっぱりしてて美味しいよッ」

「確かにこれは味付けが濃すぎ。俺の血圧が上がったらどうしてくれんだよ。ただでさえ苛々してるのに」

だから……。

「椎茸の味噌汁もうま。出汁が良く効いてるね」

「キノコも栄養価が高い食べ物ですから」

「椎茸と人参の味噌汁なんてお前俺を殺す気だろう?」

どうしてこのふたりってこんなに正反対なんだろう。
そして何故今日は3人きりなのだろう。誰か…誰かいてくれたら。

「瑠璃さんと豊さんはまだかな~?」

「瑠璃さんは豊さんの舞台を見に行ってるよ。
あのふたり相変わらず仲が良いんだから。今日、静綺ちゃんも誘おうと思ってたのに~って瑠璃さんが嘆いてたよ」

「そうなんだ…私も豊さんの舞台見たかったなぁ」

瑠璃さんには悪い事をしてしまった。それに豊さんの舞台見て見たかったな…。あの無表情で無口な豊さんがどうやって人を笑わすのか見て見たかった…。

「山之内さんと坂上さんは仕事だって。芸能事務所の社員って大変だよね。土日もあってないようなものだから。
でも彼らがいてくれるから俺たちの仕事が成り立ってるから感謝だよね」
< 167 / 347 >

この作品をシェア

pagetop