【完】スキャンダル・ヒロイン
彼女の前でだけ見せる姫岡真央の顔。それはあの花火大会の時にしおり達の前で見せたどこまでも甘く優しい一面かもしれない。
「分かりやすく動揺するね」
「へ?」
DVDを拾い上げる私を見て昴さんが意地悪な口調で言う。
べ、別に動揺していた訳ではない。どんな子と付き合っていたかなんて…興味は…全く…断じて…絶対に絶対にない。
「南条 岬って知ってる?」
「…分からないです」
分からなくって良かった。
けれど昴さんは直ぐに携帯を開いて、画像をこちらへ見せつけてきた。
携帯の画面の中にはこれまた可愛らしい美少女が。だから見たくなかったんだ。酷く落ち込んでいる自分に気づいて、また動揺する。
さっき昴さんが円城寺小雪と付き合ってたって聞いた時はお似合いだって興奮したのに…何故か今は画面の中の彼女と自分を比べてやけにへこんでいる自分がいた。
「本当に芸能人知らないんだねー?
真央と付き合ってた頃はそんなに人気じゃなかったんだけど、今は日本のトップアイドルでセンターしてる子なんだよ。
10年に一人の逸材だとか騒がれちゃって。確かに可愛い子だよね」
それを聞いて更にへこむ。
アイドルなんて全然興味がない。それでも後で南条岬の事を事細かに調べよう。そう思っている自分は、出会った頃に真央から言われたストーカーみたいだ。
10年に一人の逸材と付き合っていたのだって納得してしまう部分はある…。
だってあいつかっこいいもん。馬鹿で天然な所もあるけど…演技をしている時は格段にかっこいいもん。