【完】スキャンダル・ヒロイン

「お~け~、ありがとうねぇ。静綺ちゃん」

お礼を言う坂上さんの頭を、何故か真央は思いっきりはたいた。

「捨てねぇよッ!俺が全部食べるッ!」

そしてぷんすかと怒りながら寮を出て行ってしまった。

叩かれた頭を押さえながら坂上さんは「照れ屋だからね~本当は静綺ちゃんのお弁当が嬉しくってたまらない癖に~」と笑った。

それでも私の不安材料はまだ残っていた。

「坂上さん…真央の体調は大丈夫ですか…?
この間瑠璃さんたちも言ってたんですけど…真央の病気は精神的なものだって…一時期はお医者さんにも見て貰ってたって…」

私に背丈を合わせて眉を下げて微笑みを落とす坂上さんは、お父さんのような安心感が何故かあった。

「僕はずっと真央くんには無理をして欲しくないって無理に仕事を入れたりはしないんだけど。
今回は本人が珍しくやる気になっててね。あれはきっと…静綺ちゃんに演技を褒められたりしたからだって思っている。
だから真央くんをもう一度やる気にさせてくれて本当にありがとうね?」

「いえ…私は全然何もしていないんです」

「真央くんの病気は本当に繊細なものだから…この先芸能活動を続けていく上で完治はないと思う」

え?!それって非常にまずいのでは?不治の病じゃん。
明らかに動揺した顔をしていたのか、それを察した坂上さんは困ったように首を横に振る。

「それでも自分の力で乗り越えていかなくちゃいけない事は沢山あるよ。
でもその上でずっと真央くんの心の拠り所がどこかにあれば良いって、僕は探し続けたんだ。
それを最近やっと見つけた気がする」
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