【完】スキャンダル・ヒロイン
「心の拠り所…?」
「うん。その心の拠り所は…きっと今の真央くんにとって静綺ちゃんなんじゃないかな?」
「私?!そんなのありえないですッ!」
「静綺ちゃんが作ってくれるご飯を食べるようになって真央くんは元気になったし、静綺ちゃんと一緒にいる時間はとっても楽しそう。
君は意識していないかもしれないけれど、それは真央くんにとって十分拠り所になっているんだと僕は思うんだ。
だからこれからも真央くんと仲良くしてあげてね?」
拠り所…。私が真央の拠り所?
そんな風になれているのかな?そうなれていたらいいな…。私に出来る事なんてご飯を作ってあげる事しか出来ないけれど…。
そうなりたい。いつからか芽生え始めた淡い恋心に自分でも戸惑っていた。
でも多くを望んでいる訳じゃない。彼は芸能人で私は一般人。近づいているように見えても、距離はとても遠い。始めから、何かを始まるのを望んではいけないんだ。
―――――
「それって恋じゃん」
「やっぱり恋なのかな……」
その日の寮は皆出払っていた。というか近頃は皆余り寮にいる事はない。
その中でも特別忙しそうなのは真央と昴さんだった。変則的に動くので、早朝に出かけたり、夜中まで撮影が及ぶこともあった。
他の皆はそれぞれに仕事が入っていたけれど、今までは真央はずっと寮に居た。だから自動的に私の仕事を邪魔してきたり、一緒にいる時間が自然と多くなっていた。
けれど撮影が始まってからというもの……毎日が忙しそうだった。それがほんの少し寂しかった。寮内の掃除を済ませてりっちゃんに電話すると、恋だと言われた。