【完】スキャンダル・ヒロイン

洗練された女性は今日面接の約束をしていた山之内さん、その人だった。

そして事務室に行き面接が始まった訳だが……何故かさっき私が殴った男も山之内さんの隣で偉そうに腰をおろす。

美しい顔を不機嫌に歪ませて…まるでこちらへ見せつけるかのように大袈裟に頬を抑えて「痛い」だの「暴力女」だのブツブツと言っている。

そんな男を無視したまま山之内さんは履歴書に目を通す。

木村(キムラ)さんの紹介だったわよね」

「はい。そうです。」

木村さんは春香の苗字で、この職場は春香の叔母さんにあたる人物の紹介だった。

その春香の叔母さんにあたる木村さんはこの職場にはいないらしく、私自身も未だにこの場所がどういった場所か理解していなかった。

きちんと訊いておくべきだった。時給に目が眩んで、住み込みのバイトに軽くOKを出してしまった事を既に後悔していたのだ。

「棚橋静綺さん、21歳。大学生ね。
美しい名前ね。静かに綺麗の綺で’しずき’か…」

「へっ!お前に全く似合わない名前だな。名前負けもいいところだな」

なっ…。

私は現在山之内さんと面接をしている筈だが…?

横から口を挟んでくる男が何故か履歴書を彼女の手から奪い取り、鼻でフンッと笑った。

何こいつ…。

「男が風呂に入っているのを覗いてくるような痴女だからな。
山之内さん悪い事は言わない。こんなブスの採用は見送った方がいい」

マジでこいつ何なの?

えっらそうに!ちょっと綺麗な顔をしているかと思って、人を痴女だのブスだの。侮辱罪で訴えたい…。
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