【完】スキャンダル・ヒロイン
「お前失礼な女だな!人の親がつけた名前を馬鹿にするとか!」
あなたさっき私の静綺と言う名前を馬鹿にしたばかりですよね?
名前負けもいいとこだなとか言って…。
男はまだ文句をブツブツと言っていたが、山之内さんはそれを無視するように話を続けた。
「私はグリュッグエンターテインメントでチーフマネージャーをしている山之内と言います」
「グリュッグエンターテイメント…?」
それは会社名なのだろうか。
小首を傾げ不思議そうな顔を山之内さんに見せると、彼女は真っ黒な瞳をぱちくりとさせ不思議そうな顔をする。
「あ……ごめんなさい。会社名を詳しく聞いていなくって…
ただ朝と夕のご飯作りと…その他諸々って」
「ご飯作りだぁ?!お前飯なんか作れるのかよ?!俺の事を殺す気か?!」
だからこいつ…。
黙っている事は出来ないのだろうか。
口さえ閉じていれば結構…いやこれは一般的に言えばかなりのイケメンに属する部類の人間だろう。
そんな男を山之内さんは華麗にスルーしていた。もう彼のこんな態度には慣れていると言うのだろうか。
私は今にも再びブチ切れてしまいそうで堪らないのだが…。
「グリュッグエンターテイメントは芸能事務所です」
にこりと山之内さんが微笑む。
芸能事務所、と聞いてピンと来た。現在座っている事務室の壁一面に飾られたポスターたち。
その中でひと際目を惹くのが、現在人気急上昇俳優大滝昴のポスターだったから。
テレビは殆ど見ないし興味がない。ドラマなんて勿論全く見ない。そんな私でも、彼の顔くらいは知っているのだから。