【完】スキャンダル・ヒロイン
Act10  私の好きな人。

Act10  私の好きな人。




昴さんに連れられてスタジオに入った時丁度撮影はストップしていた所だった。

沢山のスタッフの中でいきなり私達が入って来た訳だから注目される。それは当たり前に。だって隣にいるのは大滝昴なんだもん。皆何事かって顔でざわつきだした。

その中にはこの間会ったばかりの岬さんも居た。


真央が椅子に座っていてかなり顔色は悪い。その横で心配そうに坂上さんが居て、彼に何かを説得しているようだった。

岬さんが私達の方へやって来て「何ですか?」とあからさまな敵意を向ける。そんな事も気にせずに彼女の体を避けて真央の所へ行く。

顔を上げた真央が私達を見つけて、ぎょっとした表情をする。

「昴…静綺…こんな所で何をしている…
お前ら今日は豊さんのライブに行ってその後に食事をするって…」

「そんな事はどうでも良いよッ!あんた、熱は?!」

そう言ってしゃがみこみ額に手を充てると、驚く程熱い。顔も真っ赤だし目もどこか虚ろで潤んでいる。

その横で坂上さんは困ったような顔をしてる。そして小声で密かに話し出す。

「こんな状態だったら撮影なんて無理だって僕言ってるんだけど…真央くん聞かなくって…」

「うるせぇ。こんなの大した事じゃねぇ」

椅子から立ち上がろうとしたらふらりと足元がよろける。

坂上さんと昴さんが思わず彼の体を支えると、その手を払い除けた。…ひとりで立てもしないのに撮影が出来るもんか!
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