【完】スキャンダル・ヒロイン

「姫岡さん、そろそろ時間です。いいですかー?」

「はい。大丈夫です。今行きます…」

スタッフさんに声を掛けられてふらふらになりながら立ち上がろうとする真央。

大丈夫なもんか。何をそんなに意固地になって。苛立ちが募りに募って、私は思わず真央の足を軽く蹴り飛ばした。

ふらふらな体だからだ。直ぐによろめいてその場に転びそうになった真央を慌てて坂上さんは支えた。

顔を上げた真央はキッとこちらを睨みつけた。

「ちょっとあなた何するんですか?!関係ないですよね?昴くんも一体何?撮影現場までやってきて」

真央に駆け寄った岬さんの言葉が響く。
自分でも何故こんな行動に出たかは分からない。
時間を伝えに来たスタッフさんに対して深く頭を下げる。

「申し訳ありません。私グリュッグエンターテイメントの会社の者ですが、姫岡さんは朝から体調が優れなく直ぐにでも病院に連れて行きたいと思っています。
撮影を明日に変更しては貰えませんか?」

「お前ッ何を勝手な事を!」

「ご迷惑をかけるのは分かっています。
けれど演技が出来る状態ではないと思います。
どうかお願いします」

「おいッ静綺」

そう名前を呼んで立ち上がり腕を掴んだかと思ったら、真央はその場に倒れてしまった。

結局そんな状況では撮影出来ないという事で撮影は延期された。
直ぐに真央は病院に運ばれて、点滴を打たれて眠っている。

医者の診断では過労がたまっていて熱が出たとの事だった。病気ではなくて安心はしたけれど、そこまで無理をするのもどうかと思う。
< 260 / 347 >

この作品をシェア

pagetop