【完】スキャンダル・ヒロイン

こちらの顔を伺う様にニヤリと笑いながら、意地悪に口元が綻ぶ。

’誰があんたなんかに’いつもの私ならばそう言っていただろう。照れくさくて自分の気持ちに素直になれない。

でももうそんなの嫌なんだ。けれど真央がどんな顔をしているのか見るのが怖くて、線香花火の消えそうで消えない光りを見つめながら言った。

「妬いてるよ……」

自分の声が震えているのが分かった。
丁度地面に線香花火の火の粉が落ちて、顔を上げても真央の表情は分からないままだった。

私は今顔が真っ赤になっているに違いない。そんな顔を見られるのが恥ずかしくて、スッと立ち上がった。

逃げるように立ち去ろうとした私の腕を、真央の手が掴む。熱い熱い熱が腕の先から体中へと伝わって行く。

「おい、それってどういう…」

「そのまんまの意味だよ…」

’静綺ー!’と花火をもったりっちゃんが私の名前を呼ぶ。

力の抜けた手から、腕がするりと抜けて行って、そのまま顔も見ないでりっちゃん達の方へと走り出す。

素直な気持ちを相手に伝えるのって、どうしてこんなに恥ずかしくて逃げ出したくなるんだろう。

それはきっと相手に受け取って貰えるか分からないからそれが怖くって…。
溢れ出す想いを上手にまとめられない。

伝えなきゃ伝わらないのは分かってるのに。

皆に出来る事がどうして私にだけ出来なかったのか。ちょっぴり素直になった位では伝えきれない想いが沢山あって。ほんの少しの勇気が足りなくて、それを口にする事が出来なかった。
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