かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
妙に真面目な面持ちで何を言い出すかと思えば、幼い頃の恥ずかしい思い出を持ち出されて顔を赤くした。

とはいえくれはも、引く気はないらしい。


「ことは、お願い……私たちなら、お互いのメイクと服装を入れ替えるだけで簡単になりすませる。私は自分のやりたいことのために、今お父さんの言いなりになって結婚なんてするわけにいかないの」


今度こそくれはは、切実な眼差しと声音で私に訴えかける。

その懇願を正面から受けて、私は思わず言葉に詰まってしまった。


周囲からは“似てない双子”だと言われることが多い私たち。
たしかに性格はその通りなのだけど、メイクの違いで一見そう感じるだけで、実のところ素顔はかなり似ている方だ。

ふたり揃って丸みを帯びた輪郭に黒目がちなタレ目といういわゆるタヌキ顔で、よく言えば優しげ、身も蓋もない言い方をするならば少しぼんやりとした印象の顔立ちをしている。

くっきりアイラインをはじめとする様々なテクニックをふんだんに盛り込んだレベルの高いメイクを常日頃からしているくれはと、一応はくれはにレクチャーしてもらったそれなりに見えるメイクを施した私とで、今でこそオン時の印象にかなり差があるけれど……元来一卵性双生児である私たちは、外見に限っていえばとてもよく似通っていた。
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