かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
ヒートアップしてソファーから腰を浮かせたくれはが、ローテーブルを両手のひらで叩く。それなりに大きな音が鳴って、私はビクリと肩を震わせた。

くれはの態度に、胸の前で腕組みをする父はもともと鋭い目をさらに細めて険しくする。
そうして今度はその視線を、これまで黙っていた私へと向けた。


「ことははどうだ? もしかして、父さんが知らないだけで付き合っている男がいるのか?」


厳しい顔つきのままではあるけど、声音に威圧感はあまりない。
横で「ちょっと! なんでいっつもことはには私みたいにキツくないのよー?!」なんて文句を言っているくれはのことはとりあえず置いておき、私は自分のひざに視線を落とした。


「そんなの、いないけど……でも、いきなりお見合いなんて言われても心の準備が追いつかないよ。しかも日曜日なんて、あと5日しかないし」
「ほんとそれ! だいたい、全部根回し終わった上で当事者の私たちに知らせるなんて、インケンなんだから!」


すかさず援護射撃が飛んでくる。くれはは鈍臭い私とは違い、タイミングを逃さずきちんと自分の意見を言える行動力の持ち主だ。

興奮した様子のくれはと困り顔の私を交互に見てから、父が小さくため息を吐く。
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