かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「ことは?」
再度、くれはが私の言葉を促す。
また少しの間躊躇ってから、結局私は、1番聞きたいことを口にするのを諦めた。
「今度……友達と、夜に飲みに行くんだ。せっかくだからオシャレして行きたいし、服とメイク見てくれない?」
「へー、もちろんいいよ! 張りきって全身トータルプロデュースしちゃう!」
とたんにパッと顔を明るくして、くれはが私のいるテーブルのそばへ舞い戻ってくる。
「めずらしいね、ことはがそんなこと言うなんて。ようやく自分を着飾る楽しみに目覚めた?」
「まあ、そんなとこかな」
「いいねいいねー! じゃあお客さん、さっそくこれからやっちゃいます?!」
曖昧に笑って答えれば、くれははノリノリな様子で本当に楽しそうに提案してくるから、私もついプッと噴き出した。
「ちょっと、お風呂に入るんじゃなかったの?」
「やる気スイッチ入っちゃったからあとあと! ちょっと待ってて、私のメイク道具持ってくる!」
「も~」
仕方ないというふうに言いながら、それでもこんな些細なやり取りが楽しくて顔がほころぶ。
奥宮さんへの後ろめたさと憧憬が同居する私の胸は、切なく痛んでばかりだ。
きっと、くれはもそう。口には出さなくても、私たちは互いに罪悪感と何かしらの特別な感情の狭間で苦しんでいる。
彼らに本当のことを伝えてしまえば、ぜんぶ消えてしまうとわかっているから──自分たちのしていることが良くないものだと知りながら、それでも、嘘をつき通すことしかできずにいる。
この苦しみは、因果応報だ。正しくなれない私たちは、せめて今だけは、無邪気に笑い合うのだった。
再度、くれはが私の言葉を促す。
また少しの間躊躇ってから、結局私は、1番聞きたいことを口にするのを諦めた。
「今度……友達と、夜に飲みに行くんだ。せっかくだからオシャレして行きたいし、服とメイク見てくれない?」
「へー、もちろんいいよ! 張りきって全身トータルプロデュースしちゃう!」
とたんにパッと顔を明るくして、くれはが私のいるテーブルのそばへ舞い戻ってくる。
「めずらしいね、ことはがそんなこと言うなんて。ようやく自分を着飾る楽しみに目覚めた?」
「まあ、そんなとこかな」
「いいねいいねー! じゃあお客さん、さっそくこれからやっちゃいます?!」
曖昧に笑って答えれば、くれははノリノリな様子で本当に楽しそうに提案してくるから、私もついプッと噴き出した。
「ちょっと、お風呂に入るんじゃなかったの?」
「やる気スイッチ入っちゃったからあとあと! ちょっと待ってて、私のメイク道具持ってくる!」
「も~」
仕方ないというふうに言いながら、それでもこんな些細なやり取りが楽しくて顔がほころぶ。
奥宮さんへの後ろめたさと憧憬が同居する私の胸は、切なく痛んでばかりだ。
きっと、くれはもそう。口には出さなくても、私たちは互いに罪悪感と何かしらの特別な感情の狭間で苦しんでいる。
彼らに本当のことを伝えてしまえば、ぜんぶ消えてしまうとわかっているから──自分たちのしていることが良くないものだと知りながら、それでも、嘘をつき通すことしかできずにいる。
この苦しみは、因果応報だ。正しくなれない私たちは、せめて今だけは、無邪気に笑い合うのだった。