かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
思いがけない奥宮さんの発言に、一瞬きょとんとする私。

だけどすぐにまた、へらりと笑った。


「あはは、リクエストにお応えしましょうか?」


彼と繋がったままだった右手を高く上げ、その手を軸にくるりくるりと回ってみせる。

ダンスの心得なんてないから、本当にただただ回転しているだけだ。

それでも流れていく視界の中、奥宮さんが楽しそうに目を細めながら私を見つめているのがわかって、ますますうれしくなる。


「っあ、」


なんて、油断したのがまずかった。

ヒールの高い靴を履いていたわけではなかったけれど、足もとにあった小石につまずいてぐらりと身体が傾く。

とっさに奥宮さんが私の腰に手を回して引き寄せてくれたから、なんとか転ばずに済んだけれど……彼の胸にしがみつきながら、一瞬冷えた心臓が少し遅れてドクドクと激しく脈打つのがわかった。


「ごめん、お酒飲んでるのに無茶なこと言ったね。平気? 気持ち悪くない?」
「だいじょうぶ……です」


右手を掴まれたまま腰を抱かれた状態の私は、すぐ耳もとで心配そうに訊ねられなんとか応える。

心臓が暴れているのは、転びそうになったことに驚いたのもそうだけど……今はただ、奥宮さんに抱きしめられているこの状況が恥ずかしくて、一気に顔が熱くなった。
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