微温的ストレイシープ
「はい、たしかにお預かりしました。……わ、すごい。きれいですね、このネックレス」
怒るなんてもってのほか、とでもいうように朗らかに笑ってくれている。
ずっと緊迫した状況に置かれていたから、店員さんのそんな笑顔に思わずつられてしまった。
落ち着いている雰囲気だからわたしよりも年上かと思ったけど、よくみたらそんなに年も変わらないのかもしれない。
そこまで考えたところで我に返って、あたまを深く下げた。
「ごめんなさいっ、お金は必ず持ってきます!その……いつになるか、わからないですけど……」
最後のは正直に言う必要はなかったかも。
案の定、店員さんも苦笑していたけど「待ってますね」と答えてくれた。
「念のため、お名前を控えさせてもらってもいいでしょうか?」
「あ、はい!榛名です」
「はい、榛名さまですね。ありがとうございます」
頭を下げて笑った店員さんの右耳にはピアスがついていた。
「またのお越しをお待ちしております
……あ、このことは店長にはひみつですよ?」
深夜のコンビニはもっとギラギラしているのかと思ったけど。
お店を出てから少し歩いて、振り返った先にあった光はもう眩しくはなかった。