微温的ストレイシープ
「で、ほんとに何もされなかったわけ」
「はい。本当になにもされてません」
「ほーお」
すこしだけ疑うような口ぶりだったけど、わたしが足の治療に集中しているふりをしていれば、それ以上追求されることはなかった。
あのあと、おじさんの顔の横すれすれに廉士さんの足が放たれて。
それで我に返ったのか、真っ青になって一目散に去っていったのだ。
「つーかお前、金は」
「じつは────……」
氷の入った袋を廉士さんの足に押し当てながら、経緯を話す。
話し終わると、彼は意外なものを見る目をわたしに向けた。
「へえ、やり込めたのか。やるじゃん」
ちょっと人聞きの悪いような気もするけど、そう捉えられても文句は言えない。
お金はちゃんと返すとして、問題はまた別にあった。
というよりも、ずっと気になっていること。
もっと言えば、だんだんと浮き彫りになってきた事実。