東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18
氷室仁は習慣のように仕事が終わると『氷の月』に顔を出す。
今夜も彼は店にいた。

「珍しいですね。ひとりですか?」

大毅は時折ふらりとこの店を訪れるが、秘書の黒崎と一緒に来ることが多い。
こうしてひとりで現れるのは珍しいことだった。

「ちょっとお前に聞きたいことがあったんだ」

大毅はそう言って仁の隣のカウンター席に腰を下ろし、肩を並べる。
チラリと仁の手元を見て、それが琥珀色の酒だと確認した大毅は同じものと頼む。

「食事は済ませました?」

「いやまだだ」

渡されたメニューから自家製ソーセージを選びあとは適当にと伝えると、仁はサラダやら魚介のカルパッチョやらを頼み、バーテンから受け取った小皿を差し出した。

「本日のお通し。西ノ宮叶星の出身の北海道名物鮭トバ」

北海道というだけでわざわざ西ノ宮叶星の名前を出したのは、なんとなく会いに来た用件に予想がついたからかもしれない。

< 122 / 394 >

この作品をシェア

pagetop